農薬なしで害虫が減った!「バンカープランツ」という庭づくりの新発想 テントウムシが自然に増え、アブラムシの被害がほぼゼロに。東京の公園ガーデンで実証された、植物で植物を守る方法とは。
- 3 日前
- 読了時間: 5分
「また今年もアブラムシが…」
春になるたびに繰り返すこの悩み、実は植物の選び方ひとつで大きく変えられるかもしれません。
東京・砧公園で行われた「東京パークガーデンアワード」。ガーデンデザイナーのSwallowtail Gardenが手がけたCエリアのガーデン「てんとう虫たちの食卓」は、農薬を一切使わず、バンカープランツという考え方だけで害虫を抑えることに成功した注目の実例です。

そもそも「バンカープランツ」って何?
「バンカー(banker)」とは銀行のこと。バンカープランツとは、天敵昆虫の”銀行”になる植物のことです。
仕組みを説明すると:
1. 天敵(テントウムシや寄生蜂)のエサとなるアブラムシを、
あえてバンカープランツに育てる
2. そこで天敵が増え、繁殖する
3. 天敵が庭全体に広がり、作物につく害虫アブラムシを自然に食べてくれる
わざとアブラムシを育てるなんて、最初は「えっ?」と思いますよね。でも、これが自然界の食物連鎖をうまく利用したやり方なんです。
砧公園「てんとう虫たちの食卓」が教えてくれること
Swallowtail Gardenがデザインしたこのガーデンは、バンカープランツを核にした「虫と共存するガーデン」です。そこで実践されたことを見てみましょう。
越冬できる環境を先につくる
春にテントウムシに働いてもらうには、まず冬を越してもらわなければなりません。このガーデンでは、厚く敷き詰めた木の枝と枯れ草でシェルターを設置し、ガーデン全体にウッドチップを敷いてテントウムシが越冬できる環境を整えました。
「虫を呼ぶ前に、虫が住める家をつくる」——この順番が大切です。
季節ごとにバンカープランツをリレーさせる
このガーデンのもうひとつのポイントは、春から秋まで途切れなくエサを供給できるよう、バンカープランツを季節でつなぐこと。
季節 バンカープランツ
春 原種系チューリップ
初夏 セリ科の植物
夏 ヘメロカリス(ユリ科の植物)
春の早い時期から原種系チューリップにアブラムシを集め、越冬明けのテントウムシの活発な交尾・産卵を促す。こうしてシーズン序盤にしっかり個体数を増やしておくことが、夏以降の害虫抑制につながります。
植生に「高低差」をつくる
背の高いグラス植物はカマキリなど大型昆虫の狩り場に、葉の広がりある植物は虫たちの隠れ場所に。ガーデン全体に湿った場所と乾いた日当たりの良い場所の両方をつくることで、さまざまな虫がバランスよく棲める多様な環境を実現しています。
実際の結果は?
初夏の時点でこんな変化が起きました:
「春先(3月中旬)に原種系チューリップにたくさんついていたアブラムシは、庭全体に分散して生息するようになり、植物への食害がかなり減りました。ヘメロカリスにはほとんどアブラムシがついていませんでした。」
テントウムシが簡単に見つかるほど個体数が増え、アブラムシが特定の植物に集中しなくなった——これがバンカープランツの効果です。
家庭菜園でも使えるバンカープランツ5選
「砧公園みたいな広いガーデンじゃないと無理では?」——いいえ、小さな庭やプランターでも取り入れられます。
🌿 イラクサ(ネトル)
庭の隅に自然に生えることも多いイラクサ。テントウムシの大好物であるアブラムシが集まりやすく、越冬のシェルターにもなります。刈り込まずに一角を残しておくだけでOK。
🌷 原種系チューリップ
Swallowtail Gardenが春のバンカープランツとして実際に使った植物。普通のチューリップより丈夫で、アブラムシが集まりやすい。球根を植えておけば毎年咲いてくれます。
🌼 セリ科の植物(ディル・フェンネル・コリアンダーなど)
初夏のバンカープランツとして効果的。花が咲くと寄生蜂やホバーフライ(ハナアブ)が大喜びで集まります。ハーブとして食卓でも使えて一石二鳥。
🌸 カレンデュラ(キンセンカ)
明るいオレンジ・黄色の花がホバーフライを引き寄せ、その幼虫がアブラムシを食べてくれます。長期間咲き続けるので、季節のつなぎとして優秀。
🌿 ヘメロカリス(デイリリー)
夏のバンカープランツとして砧公園でも活躍。宿根草なので一度植えれば毎年育ちます。アブラムシがほとんどつかなかったという結果が示すように、天敵が周辺を守ってくれる効果が出ていました。
はじめの一歩:3つのポイント
1. 天敵が住める環境を先につくる
ウッドチップや枯れ草を庭の一角に積んで、テントウムシや地中の虫が越冬できる場所を作りましょ
う。これがあるとないとでは、春以降の天敵の数が大きく変わります。
2. 春先に早めにバンカープランツを準備する
天敵を増やすには時間がかかります。害虫が増えてからでは遅い。春が来る前に、バンカープランツが準備できている状態が理想です。
3. バンカープランツには農薬をかけない
天敵を育てる場所に殺虫剤をかけてしまっては本末転倒。バンカープランツの周辺だけは農薬なしエリアとして管理しましょう。
まとめ
「てんとう虫たちの食卓」が証明したことは、植物の組み合わせと環境の設計次第で、農薬なしでも害虫を自然にコントロールできるということ。
大切なのは、「害虫を全滅させる」ことではなく、「天敵が活躍できる舞台を整える」こと。アブラムシも食物連鎖の一部として、適度に存在することで天敵が生き続けます。
まずは庭の隅にウッドチップを敷いてみる、原種系チューリップを植えてみる——小さな一歩から、テントウムシが自然に集まるガーデンへ。
参考:Swallowtail Garden「てんとう虫たちの食卓」(東京パークガーデンアワード) / Rothamsted Research / Garden Organic
庭づくりは、単に空間を整えることではなく、
これからの時間の過ごし方を形にすることでもあります。
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