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東京パークガーデンアワード 第3回『砧公園 ― てんとう虫たちの食卓』💧水を蓄えるガーデン

  • 執筆者の写真: Yudai Ono
    Yudai Ono
  • 11月9日
  • 読了時間: 3分

更新日:11月11日

「砧公園『てんとう虫たちの食卓』夏の景色
「砧公園『てんとう虫たちの食卓』夏の景色


💧水を蓄えるガーデン 「夏の酷暑を乗り切る、地形と素材のデザイン」


■ 「水を減らす」ではなく「水を蓄える」発想へ



真夏の酷暑が続く近年、ガーデンづくりでは「いかに水を減らすか」が語られがちです。

けれども、砧公園での『東京パークガーデンアワード』の設計を通して私が実感したのは、

“水を使わずに我慢する庭”ではなく、“水を活かして循環させる庭”の大切さでした。


「水を減らす」のではなく、**土地の形と素材で“水を蓄える”という考え方。

それこそが、近年の気候変動に強いレジリエントガーデン「Resilient Garden」(回復力のある庭)**の本質に直結します。


乾ききった土地でも、地形と素材の工夫次第で水を溜め、

ゆっくりと植物に還すことができる――。

そんな「蓄えるガーデン」の設計を、砧公園の地で実験的に試みました。



■ 土地に起伏をつけて「水を動かす」


小さな起伏が水の流れを作る「microtopography」
小さな起伏が水の流れを作る「microtopography

砧公園の現場では、平らな地面をあえて少しだけ波打たせ、

緩やかな起伏「microtopography(マイクロトポグラフィー)をつくりました。

ほんの数センチの高低差でも、雨水の動き方は大きく変わります。


雨が降ったとき、ただ排水してしまうのではなく、

一時的に水を受け止め、ゆっくりと地中にしみ込ませる場所をデザインしました。

低い部分には自然と水が集まり、そこからじわじわと土の奥へと浸透していく。

この小さな「溜まり」が、やがて乾いた季節に植物を支える**天然のリザーバー(貯水層)**となります。


この地形の工夫によって、


  • 大雨時の流出を防ぎ

  • 土壌深部に水を届け

  • 植物が「深い根」で水を探す



という自然のリズムが生まれました。

人工的な灌水に頼らず、地形そのものが“天然の貯水タンク”として機能する。

そんなデザインが、都市公園の中でも自然の循環を取り戻す手がかりになると感じました。





■ 調湿する素材を“混ぜてつくる”土


地中に湿度を保つ素材たち
地中に湿度を保つ素材たち

次に取り組んだのは、土の内部に湿度を保つ仕組みづくりです。

砧公園の土は東京都支給の乾きやすい再生土だったため、いくつかの調湿素材を層状に混ぜ込みました。


  • 🌾 籾殻薫炭(もみがらくんたん):空気を含み、通気性と保水性をバランスよく保つ。

  • 🌿 腐葉土・ウッドチップ:ゆっくり分解しながら有機質を補給し、土の呼吸を助ける。

  • 🪨 ゼオライト:無数の微細な空洞を持ち、水分や養分を吸着・放出する天然の調湿材。

  • 🪴 竹炭:過剰な水を逃がしつつ、内部に適度な湿り気を抱える。



特にゼオライトは、乾燥と湿潤を自動的に調整してくれる素材として効果的でした。

強い日差しの下でも地中の湿度をやさしく保ち、根が落ち着いて呼吸できる環境をつくってくれます。


これらの素材を組み合わせた結果、

表面が乾いても根のまわりには潤いが残る――

そんな**“呼吸する土壌”**が、酷暑の中でも植物を静かに支え続けてくれました。


乾きの中で息づく夏の植栽
乾きの中で息づく夏の植栽


■ 水のリズムを感じる庭づくり


水のリズムが描く夏の風景
水のリズムが描く夏の風景

この設計を通して学んだのは、**「水は敵ではなく、庭のリズムそのもの」**ということ。

降る・溜まる・しみ込む・蒸発する――その循環を受け止める形を整えることが、

“持続する庭”を育てる第一歩だと感じます。


酷暑を乗り切るために、水を遠ざけるのではなく、

地形と素材で水を抱きしめる庭へ。

それが、これからの都市ガーデンに必要な知恵だと信じています。


東京パークガーデンアワード 👉👉https://www.swallowtailgarden.net/tentomushi


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